本能寺の変 四二七年目の真実

本能寺の変 四二七年目の真実

  • 作者: 明智憲三郎
  • 出版社/メーカー: プレジデント社
  • 発売日: 2009/03
  • メディア: 単行本
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 普段歴史物はほとんど読まないけれども、何故か惹かれるものがあって読んでみました。それは歴史(に限らず直近の出来事でも)は一方的な主観が「事実」として残っていることが多いということを普段から感じていたからかもしれない。そんなに簡単な「イイモンとワルモン」の構図ではないだろうと思うのであります。本書のテーマである本能寺の変しかり、松の廊下しかり。 新聞でのインタビュー(取材)記事などで「Aさんは○○と言った」という事実を、「○○と息巻いた」「○○と気勢を上げた」「○○と夢を語った」などと報道者の主観によって印象操作されることは日常茶飯事。
 本書の著者は明智光秀の子孫として「歴史捜査」を行い、その結果を本書にまとめました。膨大な量の資料に当たり、光秀を始めとする当時の武将らを(たんなる思いつきで謀反をできるような立ち位置ではなく)現代で言えば経営者や閣僚クラスのような責任を追う立場であったと置くことで、経営的、戦略的視点から彼らの心理も解読しようという試みであると理解しました。
 著者が、ある文献が「○十年も経ってから書かれたものであるから」信憑性が低いと言うように、400年も経ってから書かれたこの文献も同様の価値基準で判断しなければ不公平だろうという思いはあるものの、事実であるかどうかに関係なく新しい視点として非常に楽しみながら読み進めた。 事実に関係なくといっても、著者が触れた資料、そしてそれが書かれた時代背景や資料を書いた者の立場などを理解し、経営者的視点から分析、想像(ときに妄想)した内容は、非常に説得力がありました。
 松岡正剛さんの「17歳のための世界と日本の見方」という本だったか、「歴史は勝者によって作られる」という言葉を16世紀の日本に見た気がします。


 最後の章では、これまでの「なるべく資料や事実に基づいて書こう」という姿勢から少し離れて、妄想が爆発します。ここが意外と「へぇへぇ」の連続で面白かった。「家康は光秀に感謝していた」「日光の明智平はその気持ち」「家光の "光" は光秀から」など、心を揺さぶられるエピソードも多くあります。著者はなるべく資料で当たれた事実を中心に本書を記したかったのでしょうから、それなりに言葉も内容も厳選したことと思います。本当はこの最終章のように根拠は薄いけれども自分は確信しているもの、というものをお持ちと思います。本書で「しっかりした」部分は著されたので、次はそういった「書きたかったこと」つまり本書で敢えて外した考えやエピソードなどを一冊にまとめていただけたら面白いだろうなと感じました。


 本書の巻末には2004年に初めて織田家の子孫と会ったときの複雑な心境も記されています。『400年前の事とはいえ、「加害者の子孫」として「被害者の子孫」にお会いする』複雑な思いです。私には想像もつかない感情だけれども、何か背筋の伸びるようなものを感じました。


 歴史が好きな人にはもちろん、「物事には色々な角度からの見方がある」ということに触れたい方にもお勧めしたい一冊。


追記:たまたま2009/05/10のNHKの歴史ドラマが「本能寺の変」でした。本書を読んで「本能寺の変」に多少なりとも思い入れを持ってしまった身としては(前後関係を見ていないことを割り引いたとしても)なんだか淡泊で薄っぺらに感じました。 よく分からんけど「是非に非ず」と信長が言ったシーンだけは「ぉぉ!本で読んだな」と思いました(笑)。


追追記:(2009/06/10) この本をお薦めさせていただいた tomneko さんにも本書を気に入っていただけました(^^)。http://blog.tomnekosoft.com/index.php?itemid=2336
人に何かを勧めるのはいつもドキドキするのですが、喜んでいただけてよかったです(^^)

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